2月にZOZO創業者の前澤氏による起業家に対して10億円規模の投資を行う前澤ファンドの応募がありました。
審査費用は10万円、応募期間は2月7日(金)〜2月16日(日)までの10日間となっており、当社も可能な限り最速で申込を行いました。
本来は結果がきた最速のタイミングで本記事を公開しようと思っていたのですが、応募したタイミングが早かったこともあり、前澤ファンド様側からの結果も想定より早く、最速で公開することで多数の審査待ちの人に対して良からぬ推測や、そもそも公開して良いの? という疑問もあったため全ての一次審査が終わったであろうこのタイミングにて公開をさせていただくこととしました。
事業の概要について
日本初の「フリーミアムスキー場」についての事業を提出しました。
従来、スキー場の収益基盤は「リフト券売上」となりますが、フリーミアムスキー場とは、従来の売上手法とは真逆となる「リフト券無料のスキー場」を目指す事業となります。
モンスタークリフ社について
当社、モンスタークリフ株式会社(以下モンスタークリフ)は、長野県白馬村に位置し、2012年に設立した9年目の会社です。
主に、スキー・スノーボードなどのウインタースポーツ用品の買取事業である「スノーボード買取モンスター・スキー買取モンスター」を運営しており、最近では、パウダー向けスノーボード「The Day.Hakuba 白馬スペシャル」を中国にて生産し、D2C形態にて販売しています。
売上は非公表となりますが、売上規模は1億円以上で、主にコアメンバー3名で運営しています。
売上規模的に中小企業というよりかは、零細企業に近い大きさとなります。
白馬という山岳地帯でありながら、東京の金融業界や渋谷のITベンチャー出身であったり、光通信系の元営業戦士などが集まり運営しています。
なお、白馬村では定例的に「百馬力」という集まりがあり、前回は約100名が参加し(白馬村の人口の1%相当)、ビジネスアイデアをプレゼンテーションし、そのアイデアをチームに分けれてブレストなどもしています。
白馬村は本当に多種多様な方々が集まっており、チャレンジする人を応援する風土が整っていると実感しています。
まずは結論から。41点!
「投資を行いリターンを得る」という事が目的であり、個人的な感想としては、そのような視点から見ると極めて妥当な点数だと思いました。
具体的な評価内容の中身については、今回の事業に対して具体的な評価コメントがもらえるということではなく、抽象的なコメントが記載されており、評価点数のみ前澤氏が定量的に評価していると見受けられます。
膨大な量をみているため当然の流れかと思います。
具体的な評価点数は下記となります。
評価項目 | 点数 |
---|---|
1資料の内容や構成 | 5点 |
2ビジネスモデルの新規性や着眼点 | 6点 |
3事業の収益性や規模感、成長性 | 2点 |
4事業の継続性や発展性 | 2点 |
5出資金の使途 | 6点 |
6競合性優位 | 6点 |
7提案者のビジョンや想い | 6点 |
8投資リスク | 2点 |
9上場の可能性 | 1点 |
10社会貢献度 | 4点 |
合計 | 41点 / 100点 |
上記の中でも点数が低いものを抜粋すると下記となります。
評価項目 | 点数 |
---|---|
事業の収益性や規模感、成長性 | 2点 |
事業の継続性や発展性 | 2点 |
投資リスク | 2点 |
上場の可能性 | 1点 |
どちらも、上場を含めた「収益的な側面」となっています。
投資するための事業であることから、投資家の視点からしても最も重要である部分が最も点数が低いという結果です。
今回提出したフリーミアムスキー場については、どちらかと言えば、スキー場と公園の中間に位置しています。
横展開するような再現性は低く、発展性といった意味でもそもそも難しい事業となっています。
ただ、厳しく計算しても安定した収益を上げることが可能な事業であると思っておりそのように資料を落としこみ、提案をさせていただきました。
上記を含めて、今回の点数「41点」は極めて妥当だと思っています。
事業の内容について
全体の資料は20ページ程度で作り込みました。基本的にはPhotoshopで作成してパワーポイント→PDFで作成しました。
フリーミアムスキー場事業については、規模は別にして、長期の案件として実行したいと思っており2年くらい前より資料等の作り込みをしていました。
そして、その目標に向けてエンジニアの方々と打ち合わせを行い方向性を決め、サーバをAWSに移行したり、レンタル事業や自社スノーボードを開発、中国で生産しD2C形態にて販売を開始したりなど昨年などから少しづつ推進していました。
下記はその時の資料です。
それを今回前澤ファンド向けにアレンジして提出をしました。
資料については、順番などはバラバラで、個人情報などあるので実際の資料とは若干異なりますが公開できる範囲で下記に記載します。
表紙とミッション
以下資料は実際に提出した資料から一部情報を落としたり、一部非公開にしている情報などがあるので、このままの資料を提出した訳ではありません。情報を落とし公開できる範囲で公開したいと思います。
会社概要
会社概要とメンバーについてです。
前澤ファンドの投資額的にシリーズB相当が妥当となるかと思いますが、基本的に当社はベンチャーキャピタルなどからのエクイティによる資金調達は一切行っておらず、基本的に銀行などからのデット(借入)のみとなります。
このような資料は当社のことを知っている人にして見せていなかったこともあって、今思うとそのような内容を資料に記載しておりませんでした。
事業内容など
当社の大きな事業内容についてです。
売上の推移
売上が年々少しづつ上がっています。過去一度も前年を下回ることはなく、観測史上最大の小雪と言われた2020年もなんとか前年度を上回り着地となりました。
一般的なリユースであれば、仕入れができる前提であれば翌月には売上として返ってきて、毎月、上下を繰り返しながら結果的に右肩上がりな回帰直線を描くことが可能となりますが、当社はウインタースポーツ用品がメインとなっているため、そのようなキレイな線を描くことができずコントロールが難しいです。
少ない資本の中でさらにデットのみのミニマム経営のため、一歩間違うと黒字倒産となる可能性も十分秘めています。
そのリスクヘッジとして収益は下がったとしても、可能な限りオフシーズンに売上を立てるように努力をしており、その比率を6:4としています。
さらに言うと、この冬の降雪はどうか?雪が降るか?暖冬なのか? などの話題がでる頃には、当社はすでに全力で売り切っています。1月末には、ほとんどの在庫を売り切り、おつかれさま会を開催し、ハイシーズンである2月には来シーズンのために動きだしています。
何が言いたいのかと言うと、フリーミアムスキー場の運営期間を12月下旬から3月末までとした場合、当社の既存事業と大きくかぶることがないということです。
つまり当社の既存の事業は、シーズンピークをかぶることがなく、スキー場運営と非常に相性が良いと言えます。結果として事業としてのピークが伸びることにつながります。
暖冬でスキー・スノーボード人口が減少していく中で、スキー場経営にとって重要なのはグリーンシーズン(オフシーズン)の収益化です。そういった意味では、当社はグリーンシーズンに収益化ができています。
市場規模など
ページ数が多いので割愛します。
要約すると「中国がすごい!(1月時点)」なのですが、
今となってはコロナウイルスの影響で「中国がヤバい!(日本ももっとヤバい?)」となっており、状況が変わってしまっています。
なお、国内のリユース全体では2018年に2兆円規模であったものが、2022年には3兆円規模に拡大すると予測されています。
では、斜陽産業とも言われてしまっているスノー業界ではどうなのか。確かに日本での市場規模は小さくなっているのですが、お隣の中国では国策としてウインタースポーツ人口3億人を掲げており、今後北京冬季オリンピックに向けて人口が増えていくと予想できます。
ただし、中国ではウインタースポーツの人口はまだ少なく、これから大きく育つ業界となります。
当社も中国での販路を模索するために、実際に中国に行き現地の肌感覚をつかんできました。中国のスキー場については下記エントリーにまとめてあります。
一方で日本では、ウインタースポーツの歴史は長く、市場規模は小さいながらもその累積としてのギアの資産は多く存在しています。
逆に、中国ではウインタースポーツの歴史が浅いことから「リユース品」の流通が非常に少ないです。
つまり、ウインタースポーツ人口では、圧倒的な中国が大きくなるものの、市場に眠るギアの数は圧倒的に日本のほうが多く、そこに商機があり、当社への問い合わせなどを含めてもニーズが高くなっています。
※ただし、コロナウイルス前の話です。
今回の事業
フリーミアムスキー場について
無料のスキー場を運営するとして、大きく4点がポイントとなっています。
索道から外れるという選択
「索道」とはつまり「リフト」(Tバーを含む)ということです。
ウィキペディアから抜粋すると、下記と定義されています。
索道(さくどう)とは、空中に渡したロープに吊り下げた輸送用機器に人や貨物を乗せ、輸送を行う交通機関
「交通機関」であり、日本の法律では鉄道事業法の適用を受けます。
索道安全報告書と検索してもらえれば分かりますが、各スキー場では、法令を遵守した運営、整備、緊急時対応訓練、管理者及び索道技術管理員の配置など、その項目は多岐に渡ります。
今シーズンのような歴史的な暖冬でスキー場がオープンできなかったとしても、運営、維持、管理に多大なコストがかかります。
フリーミアムスキー場では、「リフトを廃止する」ことで、限りなく低いコストでの運営を目指します。
リフトのないスキー場は、はたして「スキー場」なのかという議論は一旦忘れます。
スキー場にリフトがないとなにが起こるのか
結論、来るお客が超ターゲディング化されます。
今回の資料では、リフトの代わりに、ムービングベルトを代替としています。
それでも距離に限界があるため、当然山頂には行けず、斜度的にも初級者コースの上部までが限界です。
パークやキッカーなどの設置も一切ありません。
斜度もなく、コブもなく、距離も短い、ムービングベルトも激遅い、そんなスキー場に来る方は誰か?
「超初級者」とファミリー層のみです。
一般層は楽しむことができないスキー場です。
今までパーク向けや非圧雪、ファミリー向けなどのジャンルのスキー場はありましたが、「超初級者」だけに特化したスキー場はありません。もちろんリフト券が無料のスキー場もありませんでした。
当社は、リユースのウインタースポーツ用品を扱い、白馬村の店舗では、レンタル事業も行っています。
当社の顧客様は主に「初級者の方」であって、今回のフリーミアムスキー場のターゲティング客と完全に合致します。
初級者の方は、
- 基本的にレンタルが多い
- これからスノーギアを購入する可能性が極めて高い
- リフト券を購入しても、価格以上の満足を得られないケースが多い
という傾向があります。
特にリフト券購入の満足度については、初めて子供にスキーを教える家族にも言えます。
子供のレベル的に山頂までは行ける程はなく、少し滑ったら子供が飽きてしまう、結局自分自身が思いっきり滑ることができないにも関わらずリフト券が家族分発生するケースも多々あると思います。
なにより自分自身の経験として、初めてスキー・スノーボードを行う方が、本格的なスキー場に行く前の練習として無料で滑れるスキー場的な公園があれば良いなと思ったことが始まりとなります。
テニスクラブだろうと、クライミングジムだろうと、まずは無料の体験レッスンを行って、適正や面白さを感じ、続けるか続けないかを決めます。
スノースポーツの人口を増やすには、無料で開放されるフリーミアムスキー場のように、金銭的な負担をなくし、幅広い層の人に一度経験をしてもらい次へつなげることで、少しでもスノースポーツ人口を増やすことに貢献できるのはないかと思っています。
そして、スノースポーツ人口を増やす努力をしない限りは、業界全体そして当社自体も長期的には存続してくことが難しいと思っています。
リフト券無料スキー場の収益構造
従来のスキー場が、リフト券売上を基盤とする「垂直型」と言い換えるのであれば、
フリーミアムスキー場では、「O2O循環型(オフラインtoオンライン)」というビジネスモデルを目指しています。
すべてのチャネルから相互に集客とマネタイズを行う方法であり、基盤にある考え方は、「フリーミアムスキー場はあくまで広告宣伝媒体の1つ」という点です。
フリーミアムスキー場への入場は無料ですが、アプリ登録が必須となります。
そして、フリーミアムスキー場をハブとしてギアの情報などをデータ化、集約化することが目的となります。
広告宣伝媒体としてスキー場を捉えるため、オンライン広告と同じく、CPA(Cost Per Action)をどれくらい下げられるのかという考えに基づきます。
広告では、最初の入り口としてCPC(Cost per Click)が非常に重要な指標となりますが、リアルとつなげることでCPCを落としCTRを上げることを考えた場合、フリーミアムスキー場の費用帯効果は極めて良好と考えています。
そして前述のO2O循環型と呼ぶスキームの中でマネタイズできるポイントやコンバージョンの出口を複数持つようにします。
また、以前に下記のアンケートを取りました。
例えば、実物を見なくてもある程度そのボードの判断ができるにはどうすれば良いか。
その一つの答えとして、フリーミアムスキー場と連動させた、ユーザーヒストリー型の評価サイトを検討しています。
レベルや現在・過去の使用ギアやスタンス情報をタイムライン形式にて登録することでライダーの特徴を参照でき、それらに口コミやレビューが、オンライン、オフラインともに連動するというものです。
当社自体もすでにスノーボードの買取などで10万点以上のギアレコード情報を保有しています。
それらを総合的に組み合わせて、自分とのマッチング比率を高めることが可能となります。
また、オフラインの領域でおいても、取り扱う小売店やプロショップの減少などで、将来的にはディストリビューター(代理店)を通さずメーカーが直接販売するBtoCもしくはDtoC形態に移行されることは明らかです。
オフラインでの施策は割愛しますが。そのような中で、オンラインだけではなくオフラインにおいてもチャネルを持っておくことは非常に強みとなります。
プロジェクトの進捗
今回の事業については、ゼロから作るのではなく、既存事業の延長線でもあり、もともと超長期的な最終目標として推進していた案件となります。もちろん資金がないためできる範囲で徐々にやっていこうという小規模な範囲です
下記Tweetの通り、2018年くらいには構想ができ、徐々に推進していました。
大掛かりなものではなくとも、小規模であっても将来的には実現したいと思っています。
山を購入さえすれば、ムービングベルトなしのハイクのみであれば、実現できるといえば実現できてしまいます。
運営コストなど
このシートについては一部情報を非公開とさせていただきます。
算出根拠として、シーズンを1月から4月までとしています。来場者は月間1万人(1日あたり約300人弱)とおいています。
白馬村の各スキー場では基本的に数十万人規模の来場者となりますが、その中で最も少ないHAKUBA VALLEY⿅島槍スキー場の来場者が前シーズン(暖冬)で9.3万となります。それらより圧倒的に少ない来場者で固めの数字で落としています。
(本来はこのような資料で数字は最大値を算出して盛るものですが、自分自身の考えとして最も厳しい状況下での試算で算出すべきという謎の信念を持っています。)
その上で、超固くみて、売上6.2億、当期純利益9%の5,600万円での着地が可能と試算しました。
当期純利益5,600万という数字は、前澤ファンド的にはおそらく最下位レベルの利益額かと思いますし、イケてる中小企業の利益より圧倒的に少なく、上場の可能性も低く、再現性もないことから、前述の評価点数も非常に低く評価されたと思っています。(繰り返しますが極めて妥当な点数評価です。)
最後に
今回の記事では公開していない資料も多々ありますが、以上が大きな概要となっています。
また本件の最大のミッションは、日本でスキー・スノーボード人口を増やすことにあります。
結果は「41点」(一次審査不合格)となっておりますが、今後は自社でさらにブラッシュアップして、規模は大きくなくとも、少しづつ実現に向けて前進していきたいと思っています。
協力できる企業様や興味をもっていただいた企業様などがあればぜひ一声いただければ幸いです。
なお、モンスタークリフでは、今シーズンThe Day.Hbaku 白馬スペシャルモデルを販売し、D2C形態をとり3万円+税という破格な値段で販売し最速で完売しました。
来シーズンは、白馬のガラガラ沢に特化したパウダーボード「The Day.Hbaku Garagaraモデル 157cm」を同じく3万円+TAXで販売予定です。
ぜひTwitterなどもフォローください。
世の中がこんなことになってしまっている時だからこそ、思い切り楽しいことを考え、日本が正常に戻ったときには悔いがないように実行しましょう!
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