今回、中国の2箇所のスキー場に行ってきましたのでレポートとなります。
また視察前、2019年1月に世界最大のスポーツ用品の展示イベントISPO北京へも行ってきました。
ISPO北京については下記エントリーをどうぞ。
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そして、今回ISPO北京の中で、ISPO Academyというカリキュラムの中の「スキー場視察ツアー」というものに参加し、実際に中国のスキー場で滑ってきましたのでそのレポートとなります。
ちなみに、参加者は30人程度、アジア人は自分一人という状況でした。
はじめに
ここ1-2年で、報道などでも、「急増する中国人スキー観光客」などと言った見出しの特集がTVで流れることが多くなってきました。
中国では国の方針として3億人のウインタースポーツ人口を目指しています。
日本では1993年のピーク時で1800万人、2017年時点では580万人と言われており、その数字からして、日本のピーク時の10倍以上という驚異的な数と言えます。
ちなみに、1990年頃の白馬八方尾根スキー場の映像が下記です。
1800万人のウインタースポーツ人口でこの混雑っぷりです。
これが3億人だったら・・・。
中国最大規模のスキー場 Fulong Ski Resort
一部がオリンピックの会場にもなるスキー場です。主に北京からアクセスが便利です。
まずは東京から北京へ向かいます。
東京から北京までは約4時間くらいのフライトです。北京の空港は、かなりキレイで整備されており、出入国も非常にスムーズでした。
ちなみに、羽田空港では、出入国はどちらも機械式となっており、パスポートをかざすだけで、ほぼノンストップでゲートを通過でき、日本側もオリンピックに向けてなのか、全体的にスムーズという印象です。
北京からバスに揺られ、途中で万里の長城で休憩を挟みながら4時間程度で到着します。
なお、2019年12月までに新幹線が開通する予定で、北京から時速300キロの列車で47分でアクセスが可能となる予定です。
万里の長城の一部が見えます。
途中にはメガソーラーや風力発電所、高速道路のサービスエリアには電気自動車の充電スタンドがあったりと、正直日本とほとんど変わらないと言った印象です。
高速道路途中のサービスエリア的な場所
Fulong Ski Resortは、街全体がスキーリゾートとなっています。
スキー場の郊外にリゾートマンションのような建物も多いです。
スキースノーボードショップもスキー場の周りに数十店舗レベルで存在しています。
まだまだ開発途中であるものの、その投資額はディズニーシーを超えており、スキー場の周りには、温泉、お店、役所、学校、教会、別荘地と、もはや「街」になっています。
そして街や建物の作りも、もはや欧米といった感じです。
最終的には、街とスキー場が融合した一大施設となる予定で、至るところで開発が進んでいます。
イメージ参照 Fulong Group
街の中心は下記の模型図のようになっており、実際はもっと裾野が広がっており商店街のような建物が続いています。
中心にあるのがセンターハウスです。 そのとなりがディズニー・シーのような池に囲まれたホテルとなります。
写真ではわかりづらいですが、山のほぼ中腹まで別荘が入り込んでいます。
模型だと小さく見えるセンターハウスですが、実際はかなり大きな建物となっています。
中には、ボルダリングがあったり、非常にキレイな施設になっています。
さらに進んでいくと、中は非常に広くて思わず「イオンモールかよ!」と言いたくなるような商業施設になっています。
BURTONの店舗なども入っています。
ちなみに中国だからと言って、値段が安いということはなく、金額は日本の正規ショップとほとんど同様でした。
他のショップでは日本のノーベンバーも売っていました。
床がランニングマシンのように動いて滑走の練習が可能なマシンなども置いてあったり、VRゴーグルを使って練習できるアトラクションがあるなど、まさに小さいイオンモールです。
なお、山頂付近にある中間駅もラグジュアリーな作りとなっています。
日本のスキー場と違う点
全てが人工雪
基本的に雪が降らず、空気も非常に乾燥しており、マイナス10度を超える気温です。
そのためパウダースノーという概念はありません。
バーンも基本的に硬めとなっています。
とは言え、滑りづらいかと言えば特段そうゆう訳でもなく、硬めの圧雪バーンといったところで、これはこれで十分楽しく滑ることが可能です。
人工雪のため、コケたり、尻もちを着くと痛いです。そのため、初級者の方は腰からお尻にかけて、クッション型のプロテクターをつけている人を多く見かけます。
ちなみに、色々なバリエーションが売っています。
アマゾンでも売っているようです。
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めちゃくちゃ乾燥していて寒い
北海道より寒いです。
想像を絶する寒さです。 中国のスキー場にいた両日ともに、最低気温はマイナス20度前後で、最高温度もマイナスです。
空気が乾燥しており、風も比較的強いため、体感温度はもっと寒いように感じます。
なお、ホテルではホッカイロが無料で配布されておりましたが、
翻訳がやっつけ仕事になっており、もはや中国向けなのか日本向けなのか誰も解読不能なホッカイロでした。
なんだよ「陽ちび熊も家族」って。。
リフト券が非常に高い
僕が行った時2019年1月の羽田空港の両替レートで「1人民元=約18円」でした。
そのレートで当てはめるとリフト券は下記となります。
種類 | 中国元 | 日本円 |
---|---|---|
4時間券 | (平日)350元 (休日)450元 |
(平日)6,300円 (休日)8,100円 |
1日券 | (平日)500元 (休日)600元 |
(平日)9,000円 (休日)10,800円 |
1日券 +レンタル |
(平日)600元 (休日)700元 |
(平日)10,800円 (休日)12,600円 |
つまり週末に、1日券を買うと「約1万円」となります。
ちなみに、これ以外に旧正月などの繁忙期は、さらに100元(1,800円)ほど上乗せ価格となります。
なお、シーズン券は下記の通りです。
スキー場は18-19シーズンは、11月15日からオープンとなっています。
種類 | 中国元 | 日本円 |
---|---|---|
オールシーズン | 7588元 | 約 13万6千円 |
平日シーズン券 | 3588元 | 約 6万4千円 |
日本と比べても、もはや2倍近い価格となっています。
視察ツアーで一緒だった欧米人からみても、ヨーロッパより高いとのことでした。
まだまだ中国では、ウインタースポーツは富裕層向けであると言えるかと思います。
また、スキー場の周りに止まっている車もみても、例外なく高級車でした。
BMWを中心に、ボルボやポルシェ、ベンツなども多く、日本で言うFITやカローラクラスの車は、ほぼなし!と言える状況でした。
スキー場の中腹までが別荘地
これは街とスキー場が同時に開発され、さらに降雪がないという状況により可能になっているかと思います。
ちなみにセンターハウスの周辺でも道路に雪はほぼありません。
積雪はあっても年に数えるほどで積もるレベルではないとのことでした。
街全体を模型で見ると、コース中腹まで別荘地となっています。
別荘もモダンな建物が多く、スイスの山岳リゾートか!? と思うレベルです。
ちなみに下記の模型が中心地となっており、これが全体ではありません。
道路を挟んで逆側にはホテルやマンションなどが並んでいます。
道路の反対側にあると、スキー場までのアクセスが不便ではないか?!
安心してください。
スキーコースが道路を飛び越える設計となっています。(もちろんゴンドラも)
上記についてはまだ開発途中で、模型のみとなっていました。
スキー場の周りに街があるのではなく、街の中にスキー場を作ってしまったと言った感じです。
その他、政府の役所や学校、教会なども建設されています。
託児施設も非常に充実
Fulong Ski Resortのセンターハウスの3階部分は、すべて託児施設になっています。
レゴ施設兼託児所となり、レゴ公認のトレーナーも在籍しています。
またゲームなどもできるようになっています。
3階部分を丸々使用しており、素直にこの規模の託児所はすごいなと思いました。
北京から新幹線で47分
遅くとも2019年12月までに開通予定とのことです。
それにより最短47分で北京よりアクセスが可能となります。
東京駅からガーラ湯沢駅までが新幹線で70分程度のため、それと比較しても圧倒的にアクセスが便利になります。
11月からオープンしている
11月から滑走が可能となっており、今度年間150日の滑走を目指すとのこと。
もともとが人工降雪にて雪を作っており、さらに気温が非常に低いため可能となっています。
下記はとなりの萬龍スキー場ですが、もはや30メートル毎に降雪機が備わっています。
ちなみに、夏も最高で20度もない涼しい気候となっており、日本の軽井沢や白馬のような避暑地として通年で営業しているリゾートとなっています。
スキーとスノーボードは6:4 くらい
個人的な感想ですが、概ねスキーが6割、スノーボードが4割といったところです。
日本と同じで若者はスノーボード、年配の方はスキーです。
基本的に家族連れの場合は、皆さんスキーをやっているケースが多く、その子供も例外なくスキーをやっている印象でした。
スキー・スノーボードも上手な人が多く、中には、ずば抜けてうまい人もいました。
なお、レンタルショップのブースについては、8割スキー、2割スノーボードといった印象でした。
ヘルメットが義務化、だがリーシュコードがない
アイスバーンが多いから自分の身を守る上で、ヘルメットの義務化は分かりますが、
アイスバーンだからこそ(万が一、板が流れてしまい他人へ怪我をさせないように)リーシュコードも必須では?と思ったのですが、リーシュコードという文化がないようでした。(絶対危ないと思いました。)
柵越え=死
人工雪のため、当然ながらコース外には雪がありません。
また今回視察したスキー場はどちらも基本的に岩山を切り開いてスキー場を作っており、コース外は岩です。
コース脇には、大型のネットが張り巡らせてありますが、制御不能となり、これに勢いよく突っ込んでしまったらどうなるのだろうか・・・。
重要なのでもう一度言いますが、
柵越え=死
そう言った意味でもヘルメットは必須だなと思いました。
オリンピックの練習施設にも使われる萬龍スキー場へ
次に目指したのは、Fulong Ski Resortから車で30分程度、萬龍スキー場(Wanlong Ski Resort)です。
こちらはリゾートではあるものの、郊外にある一般的な普通のスキー場です。
個人的な印象としては、川場スキー場にプリンスホテルをドッキングさせたような印象のスキー場でした。
「ハリウッドかよ!」とツッコミたくなるようなBMWの看板が特徴です。
地下に駐車場があり、その上にショップやレストハウスがあります。
電子マネーを使って端末でチケットの購入が可能となっており、チケットからレンタルまですべてがICカードで管理されています。
ちなみにレストランや自販機も現金の使用が不可となっており、いい意味で割り切られており、代わりに全てがスピーディーです。
逆に僕のようにWe Chat Payなどを持っおらず、現金オンリーな人からすると、できることが限られ、ご飯も端にある露天商みたいなところで買うしかないという状況でした。
人口雪ではあるものの、雪質が悪いという訳ではない
人工雪とは聞いていたものの、こちらのスキー場も思っていたより雪質は悪くないという印象でした。
ガチガチのアイスでもなく、エッジの食いつきも悪くなく、練習するには決して悪くない雪質です。
ですが、日本と比較してしまうと雪質は固めでドライです。
おそらく日照具合などにより、バーンが硬いときも多そうなイメージではあります。
その理由なのか、今回行ったスキー場はどちらも、上級者コースでも20~25度程度の斜度となっており、日本やまして海外のような30度を超えるバーンはありませんでした。
一度上級者コースの日陰部分でツルッとコケてしまいましたが、かるく20メートルほどは止まることができず、尻ブレーキでなんとか出しましたが、ケツが擦り切れてしまいそうな状況になりました。(本当に危ない)
スキー場のコースは下記のようになっています。
コースも充実していて楽しめます。
このスキー場も人工雪となっているため、フェンスの先は「岩」となっています。
レンタルはBURTONかサロモン
レンタルについてはスノーボードはBURTON、スキーはサロモンで統一されていました。
ちなみに今回のトリップでは、レンタルボードで滑っています。
レンタルしたバートンのボードが便利で、小さいディスクがボードについてて、そこにビンディングをはめる感じでセット。
ビンディング中央が取っ手みたいになってて、そこを手で回すとセット完了。ドライバー不要で角度の調整が可能。 pic.twitter.com/CQlSjjgZtZ— スノーボードモンスター (@MONSTER_SNOW) 2019年1月20日
宿泊した宿もキレイ
部屋に入って進むとカーテンが自動的に閉まり、スピーカーはBOSEで統一、床は大理石っぽく床暖完備。
お茶のセットもついており、トイレやシャワーは外資系ホテルのような綺麗さがありました。
なお、リフト券同様に宿泊料金も非常に高く、平日の割安料金でさらに山側の景色の部屋で1799RMB(日本円で32,000円)となっており、週末やスキー場側の景観の部屋はさらに2万円くらい高い料金設定となっています。
混雑状況について
結論から言うと、今回1月の土日に滑りに行ったものの、非常に空いていました。
中国ではウインタースポーツ人口は現時点で1200万人と言われています。
また最新の観光庁のデータ(海外スキー市場に関するデータ整理 2018)によると、リフトが5基以上ある中国のスキー場の数は84箇所となっています。
ちなみに日本は279箇所です。
国 | ウインタースポーツ人口※ | スキー場の数 (リフト5基以上) |
---|---|---|
日本 | 580万人 | 279箇所 |
中国 | 1200万人 | 84箇所 |
※厳密に言えば、日本はスキースノーボード人口であり、中国はウインタースポーツ全体の数値
冒頭の白馬八方尾根スキー場のピーク時の様子をみて分かる通り、日本でのウインタースポーツ人口1800万人規模の頃は、おそろしい混雑状況となっています。
ですが今回の中国の行程では、1分以上リフトに並ぶことはなく、土日にも関わらずかなりスムーズで、コースも比較的空いていました。
中国のスキー場のメインゴンドラ写真が下記です。(1月の週末です。)
ちなみに先日のガーラ湯沢(新潟)の混雑ぶりです。
今日のガーラ。今日は空いているだろうと思っていたがやっぱり新幹線が到着するとどっと人が増えますね。ほかのスキー場からすると何と羨ましい光景なんでしょうね。やっぱり便利さは何物にも代えられないということか? pic.twitter.com/AzeBF6eEdI
— スキー場情報局 (@skiinfomation) 2019年2月3日
もちろん中国の旧正月のシーズンは、ありえない程混雑するかとは思いますが、中国が謳うウインタースポーツ人口「1200万人」という数値は、日本が発表する日本国内のウインタースポーツ人口数と比較して、おそらく計算方法が全く違うのかなと感じました。
中国の場合、国土が広大なため、一概に言えませんが、ウインタースポーツ人口が1200万人に対してスキー場が84箇所であり、それにこの空いている状況を考えると、
個人的にフェルミ推定をするのであれば、日本と比較した中国のウインタースポーツ人口はせいぜい「500万人」程度かな、というのが正直な感想です。
逆に言えば、13.8億人の国民数からすると、まだまだ恐ろしい程のポテンシャルを秘めていると言えます。
さいごに
ISPO北京のエントリーでも述べましたが、中国の国土は広大で、上海をはじめとした南側の都市からすると、コストの面からも、国際航空券代を考慮しても、もはや日本へ滑りに行くという選択肢が十分あり得るというのが現状です。
なお、中国のスキー場は11月オープンとなります。
そのコースや規模も、日本のイエティーなどと比較して圧倒的に広大です。
さくっと4時間で北京までフライトして、そこから新幹線(47分)でスキー場へ行けば、半日程度で到着が可能です。
現に、メーカーのSNSなどをみると、新作モデルを11月に中国にて試乗テストしているケースもあるようです。
温泉もあるし宿はキレイだし、全て電子決済でスムーズだし、すべてが快適でした。
また、ネットなどで中国内での反日意識が~などと書かれるケースが多いですが、今回の旅行の中では、特段差別などを受けることもなく、北京市内や小売店などでも英語は通じないものの、不快な思いをすることもなく、むしろ英語も通じず、中国語も話せないという状況の中でもジェスチャーなどで教えてくれたりと、むしろ皆さん優しいとすら感じたレベルでした。
日本にくる中国人スキー観光客ばかりが注目されていますが、今後中国国内で冬季オリンピックを迎え、ウインタースポーツがヒートアップする中で、
時期によっては、シーズンを待てない日本人が、日本から中国へ滑りにいくというのも選択肢として面白いと思ったのと同時に、遠くない未来でそのような人たちも徐々に現れてくるのかなと感じました。
ちなみに、中国での北京料理については、日本の料理と全然違って、自分の口にほとんど合わず、正直ほとんど食べることができませんでした・・・。
以上です。
こちらのエントリーもあわせてどうぞ。
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