日本にはない、世界で加速する新しいタイプのオフトレ施設。
スキー・スノーボード全盛期においては、千葉県船橋市にあったザウスをはじめ、日本はぶっちぎりで世界最高の施設と環境がありました。
- ザウス
- クールバル東京
- スキーイン津田沼(千葉)
- SNOVA溝ノ口
- SNOVA多摩
- カムイ龍ケ崎
- カムイ多摩
- 豊島園インドアスキー場
そしてここ20年の間、毎年のように室内ゲレンデが閉鎖となり、現在都内近郊ではSNOVA新横浜のみとなっています。代わりにKINGSをはじめ屋外ジャンプ施設やブラッシュなどのジブ施設がオープンとなっていますがどちらかと言えば初心者ではなく中級者~が通っていると言えます。
逆に世界ではどうなのか?
今まさに室内ゲレンデの建設がラッシュとなっています。
そう、屋内スキー場という分野において日本は世界の20年先くらいを行き過ぎてしまったわけです。やっと世界が追いつき建設ラッシュをはじめるも、日本では一周回って室内スキー場の栄枯盛衰がおわっていたという状況です。
そういった中で、世界各国の室内ゲレンデもここ数年で若干落ち着いてきているものの、現状は室内ゲレンデの概念とは異なる新しいトレーニング施設が台頭してきています。今回はそこにフォーカスしてみたいと思います。
ベルトコンベア型のトレーニング施設
写真の通り斜度のあるベルトコンベアのようになっており、室内で滑走やバランスのトレーニングが可能となっています。
初めての方でもバランスやエッジングの感覚をつかむことが可能な施設となっており、室内のため空調が完備されていることで1年中使用することが可能です。
地面の床がベルコンベアのようになっているので、滑っている感覚はあるものの前には進まない仕組みです。
価格は写真の台北のSnowSenseiParkにて1セッション1時間で7,000円前後(NT$1,500)となっています。
中国をはじめ世界各国で増加
現在上海を中心に上海だけでみても20店舗以上あります。
- SNOW51城市滑雪/8店舗
- SHEERCOOL雪酷滑雪/5店舗
- 顽酷运动工厂
- 复游雪·城市滑雪 /4店舗
- 酷么先生
- S.H.O.W滑雪场
- 喜马拉雅冰雪乐园
- SKINOW雪乐山室内滑雪/2店舗
最近では台湾でもオープンとなっており、アメリカにおいても同様にオープンとなっています。またタイなどでもSki365という同様の施設が展開されています。価格はタイにおいても1時間9,000円前後となります。
なぜ続々とオープンになるのか?
理由はシンプルです。
リフト券が非常に高い!
からと言われるケースが多いです。
アメリカではスキー場のリフト券はダイナミックプライスとなっているケースが多いものの高い場合は200ドルを超えます。1人あたりのチケットが日本円で2.5万円を超えます。(2023年5月現在のレートの場合3万円近い金額となります。)
中国においてすらスキー場の1日券は1万円を超えています。今の時代、日本のように5,000円以下で滑れるスキー場は多くありません。
リフト券が高い=室内トレーニング施設なのか?
それは高価なスキー旅行においては、スキー場についたら思う存分楽しむことにフォーカスしたいという理由からです。
初心者にとってスキー場1日目とは下記です。
- 絶望的な筋肉痛
- 結局初級者コースしか滑れない
- 降りてこれないので山頂にすら行けない
皆さんも同じような経験があるかと思います。同じ1日券を購入したとしてもスキー場をある程度楽しむためには相応のスキルが必要です。
昭和生まれの感覚においては「そんなの誰もが通る道。 あたり前田のクラッカーでは!?(死語)」と思う方もいるかも知れませんが、時代は昭和、平成を超えてすでに令和です。
交通費と2万円を超える1日券+宿泊費を払って、ベルトコンベアで上がるタイプのキッズ・初級者向けバーンしか行けなかったなんて合理的ではありません。
これはゴルフと似ています。初心者がいきなりコースを回るわけではなく打ちっぱなしである程度打てるため練習を積んでから向かう。
つまり1日リフト券がどんどん高騰していく世の中の流れの中で、「スキー場へ行く前の準備」という新しい価値が生まれていると言えます。
高額なスポーツであるからこそ成り立つビジネスモデルとなっており、逆に日本においては幸運にも1日券が圧倒的に安いため成り立たせることが難しいと言えます。
室内ゲレンデ向けの指導施設の存在
現在オランダにSnowSportCenter Utrechtという老舗施設があります。ここでは機器のメンテナンスや滑走の指導方法などを学べる指導者向けのスクールが開講しています。
ベルトコンベア型の施設経営者はこのスクールの卒業生というケースも多く自国に持ち帰りビジネスを始めるというケースもあるようです。
スライド型+大画面型の施設もオープンへ
こちらはスライド型となっており大型モニターを通じて擬似的な滑走と筋力トレーニングを行う施設です。
日本においては、自宅や家庭用のトレーニングとして「PRO SKI SIMULATOR」の代理店が日本にもあり購入することが可能です。下記は当社で保有していたマシンです。10分やっただけで足腰がなかなか鍛えられます。
インバウンドはますます加速
こういった施設が多くなるにつれて、日本のメリットとして日本の雪を求めたインバウンド客が多く押し寄せることに繋がるかと思います。
中国においてベルトコンベア型の施設は上海を中心に20箇所以上です。
では上海の人たちはどこに滑りに行くのか?
「北京北部」と「日本」、じつは距離はほとんど同じです。そして宿とリフト券は日本のほうが安いです。
中国ではスキー場は北京の北部に多く存在していますが北京から車もしくは新幹線で数時間かかります。
また、中国でスキー場のリフト券1万円は高すぎでは?と思う方も多いと思いますが、中国にとってスキー・スノーボードは富裕層のスポーツです。
その上、中国のスキー場はほぼ人工雪でありアイスバーンが基本です。パウダースノーとは完全に無縁です。そのため日本へ滑りに行くという選択肢はかなり現実的と言えます。
現状では、アジア人の観光客は雪に触れて楽しむ人が多い状況といえます。ですが10年後は滑走レベルもそこそこ高いというインバウンド層ももっと増えてくるのではないかと思います。
さいごに。皆さんに質問
現状、スキー・スノーボード人口に対してスキー場が非常に多く、またリフト券も海外と比べると安い状況です。
その状況の中で日本国内に室内ゲレンデができるかと言えば非常に難しいと言えます。
政府は、2030年までにインバウンドを年間6000万人とする目標を掲げており日本は観光立国として盛り上がっていくのが既定路線なのかと感じています。
その中で可能性があるのは、カジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致の中で室内ゲレンデができたり複合施設の中に組み込まれていくケースかと思います。
では仮に日本に室内ゲレンデができたとします。
ここで皆さんに質問です。
5年後「室内ゲレンデが完成しました。」
価格は「1時間で1万円」です。
果たしてその時、みなさんは行きますか?
コメント
コメント一覧 (2件)
厳しい話ですね。
昨今の地球温暖化でスノースポーツは危機的状況です。
そんな中に、この話。
北海道のニセコは、海外の富裕層をターゲットにしています。
他の大きなスキー場も右にならえ。
地元の小さいスキー場は危機的状況。
札幌オリンピックが来なければ、大きなスキー場以外は無くなっていくでしょう。
札幌オリンピックは地元札幌でも賛否両論ありますが、やらなければ、そのまま、ジリビンです。
やればチャンスが来るかもしれません。
ここで、サッカーの本田さんの言葉を引用します。
「努力は報われるかどうかは、分からない。努力は報われない事も多い。
しかし、努力してないヤツが報われる事は無い。貴方はどうしますか?オレは努力をするしかない。他の誰より考えて、サッカーをする」
札幌オリンピックをやって、日本にまたスノースポーツを流行らせる事が必要です。🙂
ベルトコンベア式のスキー練習施設、懐かしいてすね。スキーブームの頃に神田のVictoria本店の最上階にありました。土日等は予約でいつも一杯でしたよ。
バブルの頃はスキー場の混雑と、高速道路の大渋滞もあり別の意味でスキーのコストが高かったので成立つアイデアだったんでしょうね。