中国は本当にウインタースポーツバブル前夜なのか?
2022年の北京冬季オリンピックを控え、中国ではスキー・スノーボードが徐々に浸透してきています。
中国の人口は2017年時点で13.86億と言われており、スキー・スノーボードが一般的なスポーツとして盛り上がりをみせた場合、その経済効果は測り知れず、スキー・スノーボードの歴史が始まって以来の爆発的な市場拡大となる可能性が高く世界から注目を集めています。
そのような背景の中で、
世界最大規模のスポーツ用品の見本市 ISPO(イスポ)が北京で開催されることとなったため、その動向を肌で感じるべく今回実際に北京にて参加をしてきました。
今回は、その様子をレポートします。
なお、中国のスキー場視察編は別記事にて近日アップ予定です。
まずは東京から北京へ
今回のISPO北京2019の開催期間は、2019年1月16日-19日までの4日間の開催となっています。
羽田から北京へ直行便にて向かいました。
中国国際航空を使い、サーチャージ込みで往復7万円程度です。時間にして4時間のフライトで到着します。時差は1時間です。
2-3日前にチケットを取ったので割高ですが、通常であれば直行便で6万円前後、さらに海南航空の深夜出発、深夜帰りの便を使用すればさらに安く行くことが可能です。
中国人民元は、RMBという表記で、今回行った2019年1月時点では、羽田空港にて1RMB=18円の両替レート。
中国では偽札が多く、we chat payやアリペイなどの普及により、基本的に電子決済が多いのですが、残念ながら中国に口座がないため使用ができません。
また今回滑りに行ったスキー場のレストハウスのレストランでは、もはや電子決済のみ対応で(自販機も)、現金の使用すらできないケースも多々ありました。
なお、日本のVISAカードも使えないケースが多く(ホテルは使用可だった)、万が一のために三井住友VISAの銀聯カードも持参しました。
中国で2,000万店以上で使える中国版のデビットカードのようなカードで、三井住友銀聯カードは、クレジットカードのような扱いで気軽に使えます。
僕は、以前に世界一周をしていたのですが、実は中国は今回が初めての訪問となります。
北京首都国際空港は、その中でもかなり大型で、モダンであり、非常にキレイな空港でした。
北京市内へのアクセスもほぼ迷うことはないといった感じです。
なお、タクシーについては、需要過多なのか空港以外の場所で拾うのは非常に難しい印象でした。
通常はアプリで呼ぶようで、基本的にホテルの前にもタクシーは止まっていない状況でした。
ISPO会場へ(スポーツ用品の見本市)
ISPOから最も近いホテルに宿泊して、徒歩で会場に向かいました。
ISPOの会場はChina International Exhibition Centerという場所で、日本でいうビックサイトや幕張メッセのような場所で開催されています。
北京首都国際空港→ホテル→ISPO会場は、どれも非常に隣接しており、羽田空港とビックサイトくらいの距離感となっており非常に利便性が高い立地にあります。
天候は晴れているのですが、なぜかやや薄暗い感じの天気です。
PM2.5の影響か?!と思ったのですが、空気は思っていた以上に悪くはない印象でした。
余談ですが、北京首都国際空港からホテルまでの間に、吉野家を2件くらい見ました。
ISPOの開催概要と出展ブランド
3つの大型ホールを使用して開催されました。
スポーツ全般となっており、1つはアウトドア用品、もう1つはアウトドアアパレル、そして最後にウインタースポーツ関連となっています。
ウインタースポーツでは、主に下記ブランドとなっておりほとんど主要なブランド集まっている感じでした。
BURTON | Capita | UNION |
ThirtyTwo | VOLCOM | ELECTRIC |
DC | GIRO | UVEX |
Phenix | PICTURE | KESLER |
ROMP | K2 | RIDE |
HEAD | ELAN | OAKLEY |
ROSSIGNOL | NIDECKER | FLOW |
LIBTECH | GNU | ROME |
昨年末に約6000億で中国企業と買収が合意されたアメアスポーツが持つ「アークテリクス」「サロモン」については、出展がありませんでした。(個別の開催でしょうか?)
そして日本からは下記ブランドが出展していました。
RICE28 | GRAY | SPREAD |
OGASAKA | FLUX |
上記が全てではなく、他にも色々なブランドが入っており、コアなブランドとSALOMONを除き、ほとんど出揃っている感じです。
また実際のスキー場で中国人が乗っているブランドを見た限り、特段どこのブランドが偏って人気があるという訳ではなく、本当に万遍なく主要ブランドが均等に揃っているという感じでした。
また日本と比較した個人的な意見では、DCやSMOKINなどのブランドが他ブランドと同様にシェアをとっている印象がありました。またウェアにおいては、NITROのウェアを着ている人が明らかに日本より多いという印象でした。
日本のRICE28やOGASAKA、BC-STREAMを乗っている人もいました。
逆にYONEXのボードはISPOでも出展がなく、スキー場でも見かけることがありませんでした。
各ブースのチェック
2019-2020年モデルの新作のため写真がNGのケースが多く、撮影が可能な箇所だけのものとなります。
まずはOAKLEYブースへ
OAKLEYは結構人が入っています。
そしてthirtytwoも同様に盛り上がっていました。
写真はNGでしたが、ほぼ全モデルが展示してあり賑わっていました。
DCについても、かなり人が入っていました。
外のディスプレイはマネキンと思いきや、本物の人がマネキン風に立っています。
その中でも一番の盛り上がりが、CapitaとUNIONのブースでした。
写真がぶれてしまっていますが、会場が小さいながらも非常に多くの人で賑わっていました。
逆に写真がNGでしたがBURTONについては、ブースも小さく展示しているボードも数えるほどの状況でした。人もあまり入っていない印象です。
中国のドメスティックブランドも何社かありました。
見た限りクオリティーも高そうで、ハンマーヘッドのボードについては、ゲレンデでも使っている人が一定数いました。
中国ではパウダーがほぼないため、中国内でのパウダーボードを使用するケースは皆無ではあるものの、パウダーボードについても展示がありました。
K2やRIDEについてもかなり気合いが入っている印象でした。
スキーのVOLKLは、展示ブースに雪に似た綿を降らすという斬新なブースでした。
なお、下記ブランドについては、3m平米程度の小さいブースで、一つの屋根に固まって展示している形をとっていました。
展示会自体は、スキーよりもスノーボードのほうが展示している会社が多いという印象です。
もちろんELANなども比較的大きいブースで運営していました。
またスノーボードだけではなくサーフィンなどの展示もありました。
そして、1日何回かブース内にてイベントが開催されています。
実際盛り上がっているの??
結論から言うと、
想像していたより盛り上がっていません!!
行ったのが平日ということもあるのかも知れませんが、日本のインタースタイル(平日開催)より明らかに人も少ないです。
また各ブースの気合いの入り方も日本と比較して明らかに力が入っていない印象です。
正午に会場入りしましたが、間違えちゃったかな? と思ったくらいです。
受付も待ちがゼロで、中国の国民性なのかみんな寝ているかスマホをしているかという感じです。
ホールまでの廊下もご覧の通り。
会場もたくさん人で賑わっているという感じではありません。
公演などのイベントブースもあまり人が集まっていない印象です。
会場のサイズ感
インタースタイルの1/3といったところです。
会場自体はそこそこの広さとなりますが、ブースの半分がインフラ系となっています。
これは日本と異なる点であり、これからスキー場がオープンしていく中国にて、リフトやスノーマシン、ピステンなどのメーカーのブースが半分を占めています。
ランニングマシンの要領で床が動いて、その上を滑るという斬新なオフトレマシンも展示されていました。
もちろんリフトもたくさんありました。
半分がインフラ系のため、スキー・スノーボードギアのブース自体がホールのさらに半分しかありません。
既に日本の倍以上にあたる「1,200万人以上」のスキースノーボード人口がいて、これからますます市場が拡大されると言われている中で、僕自身として、最盛期のインタースタイルのような、異常な盛り上がりを期待していたのですが、かなりの肩透かしを食らった感じでした。
商談についている人たちも少なく、まだまだなのかという印象です。
この感じだと、2022年の北京冬季オリンピックで、やっと下火が点火して、そこから本当の盛り上がりを魅せてくるのような成長になるのではと言ったところが素直な感想です。
最後に:日本にとっての中国のスキー・スノーボーダー
ISPO北京パネルスピーカーWu Bin による年次調査によると、中国のウィンターアスリートの数は1210万人と言われています。
これは、中国の人口の約1パーセントしかウィンタースポーツを積極的に活動していないことになります。2022年冬季オリンピックまで、政府のプログラムの助けを借りて3,000万人まで増加する予定で、最終的には3億人を目指しています。
日本のバブル時代のスキー人口は、1993年の1860万人がピークとされており、当時の1.2億人の人口割合からすると、約10人に1人がスキーをやっている計算となり、そこから考えるに、人口約14億人に対して、「ウインタースポーツ人口3億人」という数字はかなり難しいのではという印象です。
とは言うものの、目標値の1/3であっても、「1億人」となりますので、2017年時点でスキー・スノーボード人口が「580万人」と言われている日本と比較しても、とてつもない規模であることは間違いありません。
中国からのアウトバウンドをどこが拾っていくのか?
中国のスキー場は、首都北京の北部と北西部を中心に点在しています。
中国は広大な国土のため、例えば上海などから北京を目指すと、もはや東京→北海道より遠くなります。
そのため、もはや北京に滑りに行くより、飛行機で日本へ滑りに行った方が時間的にも雪質的にも最適な選択といえます。
また費用的の面からも、スキー場視察編でも記載しますが、今回滑りに行ったスキー場では、リフト1日券はおおよそ9,000円~10,000円程度です。
宿泊した宿も、平日の割安料金でさらに山側の景色の部屋で1799RMB(日本円で32,000円)となっており、週末やスキー場側の景観の部屋はさらに2万円くらい高いです。
もちろん1泊の値段です。
コストの面からも、国際航空券代を考慮しても、もはや日本へ滑りに行くという選択肢が十分あり得るというのが現状です。
今回羽田から北京へのフライトも非常にスムースで、日本側の出入国は、自動化ゲートによりほぼ待ち時間もなく一瞬で通過できます。
パスポートを機械にかざすだけです。
初めての中国ではあるものの、北京首都国際空港も、動線が分かりやすく出入国もそれほど時間がかからなくスムースにできました。
あとはWe Chat Payさえあれば買い物もパーフェクトといった具合です。
中国のスキー場の雪質は、はっきり言って良くはありません。
中国にはパウダーはありません。基本的に人工雪です。膝下程度のちょいパウダーもほぼないと言って良いです。
また、山頂は基本的にマイナス20度くらいになっており、空気は乾燥して、風も強いというが基本的な天候です。
そのため、これからスキー・スノーボード人口が増えていく中で、コアな層は必ず良質な雪を求めて海外にくるかと思います。
国内のスキー・スノーボード人口がジリ貧となっている日本のスキースノーボード業界にとっても、中国からのアウトバウンド(訪日客)をどう集客できるか否かは、死活問題にも直結する問題であるとも言えます。
日本のパウダーいう世界屈指の自然のインフラを売り込むチャンスであることは間違いないかと思いますが、盛り上がりについてはまだまだこれからと言ったところが正直な感想です。
ISPO北京2019のレポートは以上です。
次回、中国のスキー場レポートを近日アップします。
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