スノーラボを運営するモンスタークリフでは、スキー買取モンスター・スノーボード買取モンスターというサービスを通じて、中古スキー、スノーボードの買取をオンラインで行っています。
今回は現在検討している「適正で正確な買取価格」についてのエントリーです。
現在のスノーギア買取について
現在買取モンスターでは、ブランド・モデル・過去の販売価格・アイテムの状態などから査定士が買取金額を算出しています。
業界最速で回答を行っている関係で、AIですか?!と言われることが多いですが人力です。とはいえスタッフが常に張り付いておりますので回答は早いです。
逆に他社であるブックオフさんなどの場合、書籍がメインのため買取価格においてはある程度過去の販売価格から算出して自動的に算出できているかと思います。(もちろん物量的に自動でないと追いつかないかと思います。)
一方でスキー・スノーボードの場合、トレンドやサイズといった要因も大きく影響してきます。
また状態についても書籍と異なり屋外でガシガシ使用するものとなりますので、ギアの状態における買取金額の差も大きくなりがちです。
買取価格自動判定モデルで実現できること
現在当社では白馬村の店頭にて買取を行っております。
フローは下記です。
1 | カメラ上で査定 |
2 | 外部からでも自社査定システムへ登録し出力 |
3 | 店舗のプリンターに見積書とQRコードが自動出力 |
4 | iPadでQR読込→金額表示→必要事項入力&サイン |
天井にカメラが設置されており、遠隔にて金額の算出を行い、さらに買取明細が遠隔印刷により店頭のコピー機に印刷されます。その明細記載のQRコードを読み取ることで店頭のipadよる買取依頼が可能となっています。
個人情報もウェブと同じサーバーには置かず、IPアドレスでアクセス制限された別のデータベース上に保管され、以降の販売~経理までが一元管理されます。
それ、どこが販売しているパッケージサービス?? いいえ、すべて自社開発です。
白馬村にあるただの中古スノーボード屋さんなのに頑張りすぎです。
本人確認資料においてもパスポートスキャンを行うための特殊な装置によりセキュアな環境にて自動読み取りが可能となっています。また法的要件期間を過ぎるとデータは自動的に削除されるシステムです。
お金のやり取りについては現在現金となりますが、銀行振込であれば2018年よりほとんどすべての銀行が加盟する「全銀システム」が24時間対応となったことで、1年365日・即時入金が可能となっています。これにより、ほぼリアルタイムにて着金が可能です。
つまり、金額の自動判定ができるようになると、無人(遠隔)にて買取が可能となります。
※法的要件は確認が必要です
なぜ中古スキー・スノーボード屋がここまでやるのか? それはチャレンジしないこと即ち衰退だからです。
つまり、この先10年先も生き残りたいというのが理由です。(あと自分が楽をしたい。)
現在検討中のアプローチ
上記式をベースとした一般的な多変量解析(重回帰分析)を用います。
重回帰分析とは、例えば店舗の売上を予測するために、駅からの距離、周囲の人口、駐車場、広告費などを複合的な要因をもとに過去のデータから定式化し効果測定を行うものです。
過去、スマートフォンの買取価格、中古車の買取価格など過去多くの方が予測モデルを検討しています。
参照できる本や事例も多く、SASやRと言われる一般的な統計ソフトを使わなくともエクセルの開発ツールを使ってある程度のことができるというのが理由です。
「男」や「女」などの性別など、数式で表すことが難しいケースについては「ダミー変数」という概念を使います。
ジャンルは異なりますが、個人的に世界銀行 石井菜穂子さんを崇拝しており、本書でもアプローチ方法がすばらしく、重回帰分析の実例は下記の本が非常に参考になります。
なお、従属変数を販売金額として、独立変数を下記とします。信頼区間は95%とします。
- ブランドパワー
- 季節
- モデルの人気度合いの変数
- サイズ
- アイテムの状態(5段階評価)
- 過去の販売金額
- 型落ち年数(年式情報)
ここから求めた金額から当社が目指す利益率の算出を行うというものです。
もともと当社が使用するデータベースはAPIが実装されていることから、API経由にて買取金額・販売実績を取得することは可能ですが、さらにデータ数を拡張するためaucfan様が提供するAPIなどを用いて正確金額を実装する必要があります。
とはいえ、当社以外のオークファンなどの場合、年式情報を記載していないケースが多く課題が残ります。正確なデータを得るのは膨大の過去データの整理が必要となり、かなりのマンパワーが必要です。
逆に当社だけのDBを使うと一部レアなモデルなど買取流通が少ないモデルの測定ができません。
スノーボードにおける買取価格自動判定モデルは現在まだ着手したばかりで実現できておりませんが、現在BURTON CUSTOMモデルだけに特化して定式化ができないか検討しています。
このモデルが確立できれば、あとはブランドパワーやモデルの人気度を都度更新することで買取価格を都度アップデートしていけると思っています。
目指すべきこと
「適正価格を追求すること」の一言に尽きます。
皆さんはメルカリなどで中古スノーボード、スキーなどを見たことがありますか?
1つ大きなことに気づきます。
それは「年式情報」がないケースが多数を占めるということです。
どういうことが発生しているのかと言うと、「YONEX 国産 高性能」と謳いながら15年くらい前のモデルが数万円で販売、購入されているというのが事実です。
「YONEX 国産 高性能」自体間違っていないです。また「(大昔ではあるが)型落ち」という表現についても同様です。
間違ったことは言っていません。
当社が販売する2次流通のギアは99% 年式情報を必ず入れています。
屋外で使用する消耗品で且つ高スピードで遊ぶスポーツがあるがゆえに、経年劣化状況は非常に重要な指針です。
メーカーの製造物責任(PL法対応)も日本国内ではさすがに10年までとなっています。
当社のミッションは中古ギアを通じてスノースポーツをもっと身近な遊びにすること
なにが適正価格なのかと問われれば難しいですが、少なくとも「公正」を求めることが業界全体を長く保つことにつながるのではと思っています。
当社は当社で中古市場という分野でその考えを貫きたいと考えています。
いつか無人査定システムがリリースされた時には、このエントリーでの実証が完了したのだなと思っていただければ嬉しい限りです。
======================
余談ですが、下記は数学に詳しくなくとも理解が深まり本当に良書です。
コメント