日本においてはスキー・スノーボードの参加人口は年々減ってきており、バブルの時代から各スノーブランドは栄枯盛衰を繰り返してきました。
一方で海外の場合においては、多くのブランドがM&Aなどにより統合され大資本の一部として吸収され拡大、もしくは生き残るというケースが少なくありませんでした。
例えばK2であれば、投資会社であるKohlberg & CompanyがVolkl、K2、Marker、Dalbello、Madshus、Line(スキー)、Full Tilt、Atlas、Tubbs、Ride、BCAなど多くのブランドを保有しています。
そして現在、ここ数年でスノー系ブランドの非スノー化が進んでいます。
日本、アメリカ、ヨーロッパにおいて市場的には爆発的な成長は難しいというのが背景にあり、いわば客層の取り合いに近い状態となっています。
営利を求めなければならない企業としては「爆発的な成長が見込める中国へ投資するか」、「非スノー化で市場を開拓するか」の2択の選択となっていると言えます。
今回は各ブランドにおけるその非スノー化の状況を整理したいと思います。
なぜ企業は成長しなければならないのか、という点においては最近読んだ下記本がおすすめです。
SALOMONはシューズ分野にて圧倒的な存在感へ
SALOMONはスキーのエッジからはじまり、ビンディングそしてブーツを開発したのが原点です。そして今はランニングシューズの世界で最も成長している企業へ変貌を遂げています。
ファブリック素材を扱うChamatex社とパートナーシップを提携し、さらに2021年からハイスペックなランニングシューズなどを中心に生産をフランスに移し、最新鋭の工場にて生産を開始しています。
世界最大級のスニーカーを扱うオンライン マーケットプレイスStockXのおいて、SALOMONのシューズは2021と2022比較にて2,277%成長と驚異的な数値を叩き出しています。
海外のニュースなどでは、NIKEやAdidasがその座を奪われることがないが、サロモンをはじめホカ、ザ・ノース・フェイスはかつてないほどに成長しているスニーカーブランドになっていると報じられています。
VOLCOMはゴルフ
VOLCOMは1991年に創業したアメリカの横乗り系ブランドです。主にスノーウェアにおいて日本でも人気があります。
アメリカでは数年前からリリースしていたゴルフ分野への進出を日本でも加速させています。
2023年春夏シーズンより『VOLCOM GOLF』として日本でも展開予定となります。
ELECTRICはフィッシングとゴルフ
ELECTRICはアメリカで誕生したブランドです。スノーボード全盛期の方ならばご存知のアーネットというブランドの創業者の子供(+もう1名の仲間)が立ち上げたブランドです。
2008年にVOLCOMに買収されていますが、2013年にVOLCOMのもとから離れています。
ELECTRICに関しても2016年からゴルフとフィッシングの市場に進出しています。
特にゴルフにおいてはサングラスだけではなくアパレルもリリースしており、国内ではアーバンリサーチなどで取り扱いがあり力が入っているのが伺い知れます。
HEADもゴルフへ
HEADはゴルフ老舗のPower Biltと提携を発表しました。
テニスラケットの製造プロセスとPower Biltの販売網を活かしオンラインとアメリカの全国のゴルフ専門店にて販売することを発表しています。
ROSSIGNOLは自転車へ
ロシニョールは創業者が2016年に亡くなり、翌年からRossignol BikesというMTBとe-Bikeに力を入れています。
そして2022年からワールドワイドの販売を準備しているという報道されます。
BURTONはキャンプ
BURTONも数年前からキャンプに力をいれており、おそらく広告費も相当かけていたのではないかと思います。
現在も販売は行っておりますが、人気や業績につきましては不明です。
どちからというとBURTONの本業のスノーボードにおいて中国へ力を入れているという印象です。
FLUXやYONEXは?
FLUXについては親会社がカーメイトでありカー用品大手です。YONEXについてはバトミントン、テニス、ゴルフが主力です。特にYONEXにおいてはバトミントンの成長がここ数年で著しく約6割がバトミントンの売上であり、さらに国内より海外での販売割合が圧倒的に大きい状況です。
つまりFLUX、YONEXについてはスノー業界での存在感は大きいものの、もともと本業からするとおそらく数%以下の売上程度であり、言わばもともと非スノー化されていると言えます。
43degreesはゴルフへ
北海道の企業であるスノーウェアの43degreesを展開するフォーシーズンズは、比較的低価格~中価格帯のブランドとしてネット販売を中心に人気のあるブランドです。特にデザイン性が高く初級者を中心に幅広く浸透しているブランドといえます。
同社もunitementというブランドにてゴルフに進出しています。
その他ブランドは中国へ攻勢
非スノー化を目指すブランドもあれば、スノー1本で攻めているブランドも当然にあります。
代表的なブランドはCapitaやUnionです。
そしてこれらのブランドは中国へ攻勢をかけています。
中国でのスノー人口は現在1億人とも言われており、スノー業界始まって以来の市場拡大が続いています。そして、中国では国策としてスノー人口を3億人まで上げる計画を打ち出しており、スキー場を整備するなど国を挙げての推進が行われています。
なお、2023年現在室内ゲレンデだけでも中国国内に44箇所、現在建設中のものを含めると2023年末には50番目の屋内スキー場がオープンすると言われています。
中国ではスノー業界への参入が多い
今まではブランドが非スノー化という切り口でしたが、中国においては逆です。アウトドアブランドがスノー業界に攻勢をかけています。
例えばTHE NORTH FACEなど、日本においてはアウトドア全般というイメージが強く、スキー・スノーボードというイメージはありませんが中国においてはスキー・スノーボードに注力しています。大会などを主催し、横乗り業界での存在感を高めている状況です。
とはいえ、中国では独自の商習慣や例えばウェブサイト検索1つとってもGoogleは使用できず、百度などの検索エンジン1つとっても海外企業は締め出されます。そして国としてのルールなども非常に厳しくグローバル企業であっても苦戦を強いられているという声も聞きます。
中国ブランド NOBADAYの活躍
グローバル企業の中国市場への攻勢にともない、当然ながら中国国内でも大型ブランドが誕生しています。
マックス・パロット(Max Parrot)選手が履いていることで注目を集めた中国のブランド”NOBADAY”などの新興ブランドも急速に拡大しています。
2014年北京で設立のAoxue Cultureが運営しており、日本では知名度は高くありませんが中国発のスノー系スタートアップで直近で約4億円を調達し、当初からアメリカに現地法人を作り海外進出を積極的に行っています。
子会社は既に6社、ウェアやアパレル等も全方向に展開
- レンタル
- 保管
- メンテンナス
- 情報発信(数百万人のフォロワー)
- 実店舗出店の加速
など一連のサービスを一貫して行っているという点とオンラインとオフラインを完全につなげた体験を重視しており、17年間BURTONのウェア開発を先導してきたAK457の生みの親”アンドリュー・バーク氏”も同社に参加しています。
中国国内で6,000平方メートルの研究センターを設立、最新のトレンドを追うのではなくトレンドを作る側にシフトしており、メーカーが顧客に直販するD2Cスタイル、代理店をかませる他ブランドとは異なり今後国内外でスノー業界の風雲児になることは間違いブランドとなります。
下記は中国へ行ったときのリポートです。
最後に。ゴルフという市場
日本において言えば、スノー業界の数倍規模の市場であるからです。そして潜在的な市場規模はもっと大きいのではないかと予想されます。
ゴルフ | スキー・スノボ | |
---|---|---|
人口 | 560万人 | 430万人 |
初級者セット | 約10万円 | 約6万円 |
シーズン | 7ヶ月 (3-6月/9-11月) | 4ヶ月 (12月-3月) |
小売の市場規模 | 2760億円 | 530億円 |
参加人口比でいうと1.3倍となりますが、その市場規模は市場調査結果としては「5倍」となります。
しかし、実際にアルペンやゼビオ等の上場企業における量販店での決算情報を見てみるとゴルフ用品の売上は、直近の両社の決算ベースだとスキー・スノーボードの×8倍規模となります。アルペン、ゼビオどちらもキレイに約8倍となっています。
ゴルフは郊外には打ちっぱなし施設もあれば、都内においてもシミュレーションゴルフの施設をよくみます。
ゴルフのすごいところは、サッカーや野球のように、小さい頃にだいたいみんな経験をするようなスポーツではなく、社会人になって初めてやるようなスポーツであるにも関わらず市場規模が大きい点です。
つまり、企業からみるとスキー→ゴルフに変更があってもゴルフ→スキー市場への転換というのはメリットが薄いと言えます。
ただし、ゴルフとスキースノーボードが異なる点は、インバウンドが大きいという点です。スキー場への来場者や海外インバウンド向けの小売、レンタル、スクールなど、市場全体としてはまだまだポテンシャルはあるかと思います。
資本主義の中で企業は成長をし続けなければならない状況おいて市場拡大を目指す動きは当然でありますが、インバウンドを含めてスキー・スノーボード市場がもう1度盛り上がってほしいと感じます。
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